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<ろ>ロボット

『週刊ロボットキング』の記者、豆川豊作は神保町を訪れた。
神保町大学ロボット制御工学科教授、猪俣光を取材するためにである。
立ち並ぶ古本屋を横目に見ながら待ち合わせの喫茶店に入ると、奥の方の暗がりで白髪の男が手招きしている。

「どうぞ、こちらへ。ブレンドでしたよね」

猪俣教授は顔なじみとあってか、リラックスした表情でブレンドを三つ注文した。
隣には今回の取材の主役となる「アルファ君」が座っていた。
会うのは今回が二度目となる。
初めて会ったのは三年前、猪俣先生の研究室だった。

「こんにちは」

喫茶店にいる他の客から感嘆の吐息が漏れた。
今回はアルファ君が自分から挨拶をしてきた。
だいぶマシになったような気がする。
前回は会ってもまともな挨拶などできなかった。
あのときは「こんにちは」に対し「どういたしまして」と言ってきた。
結局、その取材は編集長に鼻で笑われて記事にはならなかった。

「こんにちは」

ややあって私は返事をした。
するとアルファ君はニッコリと微笑んだ。
私もおもわず微笑んでしまった。
これはマシどころの話ではない。

「猪俣先生、ずいぶん改良しましたね」
「そうなんですよ。努力が無駄になりませんでしたよ」

猪俣先生の表情も緩みっぱなしだった。

ここでコーヒーが三つ運ばれてきた。

「コーヒーもうまく飲めるようになりましたよ。アルファ! Drink coffee!」

その命令を聴きとると、アルファ君は目の前にあるコーヒーカップを持ち上げてコーヒーを飲み始めた。
そして一気にコーヒーを飲みほしてしまった。

「大丈夫なんですか、そんなに急いで飲んで」

私は前回の取材のことを思い出していた。
前回は飲んだコーヒーが胸のあたりから漏れ出し、電子回路をショートさせてしまった。

「もちろん。今回はアセチレンで特殊加工したフィルムで防水しているから、電子回路がショートしてしまうことにはならないのですよ」

そう猪俣教授が説明しているとき、私は思わず叫んでしまった。

信じられない光景だった。

アルファ君が何食わぬ顔で私の目の前のコーヒーと猪俣先生のコーヒーに手を伸ばすと、全部飲んでしまったのだった。
さらにそのテーブルにコーヒーがないのを確認すると、アルファ君は隣でスポーツ新聞を読んでいるサラリーマンが手に持つコーヒーカップをひったくろうと近づきはじめた。
猪俣先生は思わず手をバタバタさせ、子供のような金切り声でこう命令した。

「アルファ、ヤメロ! コーヒー飲むのをヤメロ!Stop drinking!」

アルファ君はコーヒーを飲むのをやめた。
喫茶店全体が今度は沈黙につつまれた。
アルファ君はやってしまった。
猪俣教授は急に不機嫌になり、腕を組みうつむいたまま黙りこんでしまった。
両手の拳が強く握られていた。
アルファ君もしくじったことに気づいた様だった。
下を向いてマイナスの気持ちを表現している様に見えた。

その沈黙は5分ほど続いた。

私は耐えられなくなり、急用を思い出したことにして喫茶店をあとにした。

夕暮れ時、私は馴染みのない神保町を少し歩いてみることにした。
歩きながら私は教授の失敗の原因を考えていた。

「そもそもアルファ君に、コーヒーは要らんだろう」

さて、コーヒーをどこで飲み直すことにしようか。

Appendix

プロフィール

マイケル林(仮)

Author:マイケル林(仮)
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都内在住(マルエツプチより徒歩1分)


<得意技>
投げっぱなしのペペロンチーノ

無理な体勢からのペンネアラビアータ

トップロープからの海老のアヒージョ

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『あいうえお話ver2.0』___ uploading!

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